
肉料理を美味しく仕上げるためのポイントの一つが、軟らかさの保持です。せっかくなら、リーズナブルな肉でも美味しく軟らかくいただきたいところ。
家庭で誰でも簡単に実践できる、肉を軟らかくする方法について解説します。肉が硬くなってしまう理由や、軟らかくするために活用したい酵素について学んでいきましょう。
火を通すと肉が硬くなる理由とは?
火を通すと肉が硬くなる理由は、タンパク質の性質にあります。肉に含まれるタンパク質をさらに細かく分類すると、以下の3つになります。
- 筋原繊維タンパク質
- 筋形質タンパク質
- 筋膜(コラーゲン)
問題は、これらのタンパク質が凝固する温度です。筋原繊維タンパク質の凝固温度は、45~50℃。筋形質タンパク質と筋膜も、大体60℃前後で凝固してしまいます。
実際に肉を食べてみると、「高い肉よりも安い肉のほうが、硬さが気になる…」と感じる方が多いのではないでしょうか。この理由は、肉のサシにあります。肉のサシとは、筋肉全体に分散した脂身のこと。火を通すことでタンパク質が硬くなるのは避けられませんが、高価な肉には脂身が細かく入っているので、軟らかく感じられるというわけです。
タンパク質が多い肉は、比較的リーズナブルに購入できるだけではなく、低カロリーでダイエットにも効果的です。一方で、その肉に多く含まれたタンパク質が原因で、硬さを感じやすくなってしまいます。
肉を軟らかくするポイントはプロテアーゼ
硬くなりやすい肉でも、ちょっとしたコツさえ知っていれば、軟らかく仕上げられます。そのためのポイントは、調理にプロテアーゼという酵素を取り入れることにあります。
プロテアーゼには、タンパク質を分解する働きがあります。タンパク質はもともとアミノ酸が連なってできたもので、プロテアーゼはアミノ酸のつながりをところどころで破壊するのです。これによって、肉を口に含んだときの食感が、軟らかくなるというわけです。
プロテアーゼを上手に活用すれば、リーズナブルでヘルシーな肉でも、軟らかくできるでしょう。硬い肉が苦手な幼い子どもや年配の方でも、タンパク質をしっかりと摂取できます。
プロテアーゼが含まれる食材と、その使用上の注意点
では実際に、プロテアーゼはどのような食材に含まれているのでしょうか。家庭でも取り入れやすい食材は、以下のとおりです。
- パイナップル
- タマネギ
- リンゴ
- キウイ
- マイタケ
- ショウガ
- 塩こうじ
- パパイヤ
これらの中でも、特に高い効果を期待できるのは、パパイヤです。パパイヤを家庭料理に使う機会は少ないかもしれませんが、生のまま刻んで肉と合わせておいたり、一緒に調理したりすることで、肉を軟らかくできます。
リンゴやキウイといったフルーツは、生のまますりおろして、その中に肉を漬け込んでおきましょう。甘味や酸味、香りが豊かなフルーツは、肉の味わいも豊かにしてくれます。また、肉の臭み消しにも役立ってくれるでしょう。
野菜や調味料は、普段の肉の調理にも使いやすいもの。プロテアーゼの効果を意識しないまま使っている方が多いかと思いますが、「肉を軟らかくする」という作用を頭に入れて調理することで、より高い効果を得やすくなるでしょう。
プロテアーゼの効果で肉を軟らかくしたいときの注意点は、酵素を含む食材は生のままで使うという点です。酵素は熱に弱く、火を通すとうまく働かなくなってしまいます。
また、酵素に漬け込む時間が長すぎると、タンパク質が壊れすぎて肉全体がボロボロになってしまう可能性があります。漬け込む時間は、20~30分にとどめておくのがおすすめです。調理の最初に肉を漬け込み、その後に別の作業を進めていくことで、時短調理が可能となります。
肉料理を軟らかく仕上げるおすすめ調理法
プロテアーゼを使う方法以外にも、肉料理を軟らかく仕上げる調理法があります。ぜひ、料理に合わせて、下記の方法を組み合わせて調理してみてください。
★肉をたたく
肉の硬さの原因である繊維を、物理的に断ち切ることで、肉を軟らかくする方法があります。下ごしらえの1ステップとして、ぜひ肉をたたいてみてください。
- まな板の上に肉を広げる
- 包丁の背で、肉を優しく細かくたたいていく
- 肉をひっくり返して、同様にたたく
野菜やフルーツを使う方法とは違って、肉の味に影響しない点が、こちらの方法のメリットです。厚みのある肉にも、均一に火が入りやすくなるため、加熱し過ぎを防ぐ効果も期待できます。
★片栗粉を活用する
肉に火を通して硬くなってしまうのは、肉の内部から水分が失われてしまうためでもあります。肉の表面に軽く片栗粉をまぶして調理することで、肉汁が流れ出るのを防いでくれるでしょう。
肉汁には、肉本来のうま味が凝縮されています。肉の表面をコーティングすることで肉汁の流出を防ぐことができれば、肉本来の味わいを、より一層楽しみやすくなります。
★炭酸飲料を使う
シュワシュワとした刺激が魅力の炭酸飲料には、炭酸水素ナトリウムが含まれています。この炭酸水素ナトリウムにも、タンパク質を分解する作用があります。
使い方は簡単で、好みの炭酸飲料を用意したら、その飲料に肉を10分以上漬け込んでおけばOKです。
炭酸飲料が甘い場合は、それをさっと洗い流して調理するのがおすすめ。甘くないタイプの炭酸飲料であれば、そのまま調理に使えるでしょう。
★乳製品を使う
牛乳やヨーグルトも、肉類と相性の良い食材です。乳製品に含まれている乳酸菌も、肉を軟らかくしてくれます。また、肉の臭み取り効果も期待できるのが、こちらの方法のメリットです。
乳製品に漬け込んだあとは、ペーパータオルで肉の表面をしっかりと拭き取りましょう。肉を調理してしまえば、乳製品の風味はほとんど気にならなくなります。
ちょっとした工夫で、肉をより軟らかく!
高い肉はなかなか購入できないけれど、安い肉は硬さが気になる…。このような悩みを抱いている方が多いのではないでしょうか。このような場合には、ぜひ今回紹介したコツを参考にして調理してみてください。
肉が硬くなる理由を理解し、下ごしらえの段階で適切な処置を行うことで、いつもの肉が驚くほど軟らかくなります。家族みんなで、軟らかくて食べやすい肉を楽しんでください。