
食物に含まれる栄養素は、なるべく無駄なく摂取したいところです。しかし実際には、調理中のさまざまな過程において、失われる栄養素は少なくありません。
失われる理由や調理過程、また特に注意したい栄養素について解説します。栄養をなるべく損失しないよう、賢く食べるコツも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
調理によって栄養が失われる理由
調理によって栄養が失われる理由は、各栄養素の特徴によるものです。たとえば、水に溶けやすい栄養素は、食材を水で洗い流しただけでもどんどん失われてしまいます。とはいえ、購入してきた野菜類を、洗わずにそのまま食べるのは現実的ではありません。
水と同様に、注意したいのが熱です。栄養素の中には、加熱によって失われるものがあり、火を通すことで栄養素を損失してしまうケースがあります。
食材に含まれる栄養をなるべく効率的に摂取したいなら、大切なのは食材ごとの特徴をしっかりと頭に入れておくこと。それぞれにどのような栄養素が含まれているのか、どのような調理法が望ましいのかなど、事前にチェックしておきましょう。
失われやすい栄養とは?
では、水や熱によって失われやすい栄養には、どのようなものがあるのでしょうか。注意したいのは、以下の3つです。
- ビタミンC
- ビタミンB1
- ビタミンB2
これらの栄養素は、水溶性ビタミンと呼ばれています。名前のとおり、水に溶けるビタミンのため、水に浸けておいたり洗ったりすると、どんどん流れ出していってしまうでしょう。
ビタミンCとビタミンB1は加熱にも弱いため、特に注意が必要です。水溶性ビタミンが多く含まれているのは、野菜類です。たとえば、ほうれん草はビタミンCを豊富に含んでいます。ほうれん草をおひたしにするためには、鍋に湯を沸かして茹でるでしょう。この過程で、多くのビタミンが失われていってしまいます。
とはいえ、水で流したり加熱したりしたからといって、すべての栄養が失われるわけではありません。キャベツはビタミン豊富な野菜ですが、生の状態で大量に食べるのは難しいのではないでしょうか。
こんなとき、茹で野菜にすれば、生のときよりも多く食べられるようになります。調理によって栄養が減少した分、量で補うことも可能です。
大切なのは、調理によってある程度の栄養が失われるのは、仕方がないと理解すること。「栄養が失われるのが嫌だから、調理は避けよう」と考える必要はありません。食べにくく、味に変化のないメニューを食べ続けていると、野菜そのものに対して苦手意識を抱きがちです。それよりも、美味しく楽しく、継続的に栄養を摂取し続けるのが望ましいでしょう。
栄養素の損失を完全に防ぐことはできませんが、ちょっとした工夫で損失量を減らすことは可能です。できる限り栄養を逃さないための調理のコツを、頭に入れておきましょう。
栄養をなるべく損失しないようにする3つのコツ
野菜類からできるだけ効率良く栄養を摂取するためには、栄養を逃さないためのコツを実践してみましょう。3つのポイントを紹介するので、日々の調理に活かしてみてください。
★加熱時間はできるだけ短くする
熱に弱いビタミンB1やビタミンCは、加熱時間が長くなればなるほど、損失量が多くなってしまいます。茹でたり炒めたりする場合には、加熱時間ができるだけ短くなるよう工夫してみてください。
キャベツやブロッコリーなど、茹でる場合は時間に注意。炒め物にする場合は、最後に投入してさっと火を通すのがおすすめです。
また、野菜を茹でる際には、電子レンジを活用するのもおすすめです。栄養が水に溶け出すリスクが少なく、また加熱時間も短くできます。調理の手間も少なくなりますから、ぜひ積極的に活用してみてください。
★溶け出したビタミンも摂取する
水溶性ビタミンは、水に溶けたからと言って、すぐに失われるわけではありません。流水で洗い流した場合は別ですが、鍋に野菜を入れて茹でた場合、その茹で汁の中に一定の栄養素が残されているのです。つまり、煮汁までしっかりと味わえる料理にすれば、栄養の損失は最小限で済ませられます。おすすめは、スープやポトフにする方法です。生野菜よりも多くの野菜を食べやすく、またせっかくの栄養が無駄になる恐れもありません。
★切る前に茹でる
野菜を茹でれば、水や熱によって栄養が失われてしまいます。しかし、茹でる前の下ごしらえの方法によって、栄養の損失量は大きく変わってきます。
たとえば、ビタミン豊富なほうれん草は、おひたしにするのも美味しいものです。ほうれん草を調理する際には、ぜひ「茹でてから切る」という順番を意識してみてください。ほうれん草をカットしてから茹でると、断面が多くなり、その分栄養が流出しやすくなってしまいます。
ちょっとしたコツで栄養素を守れますから、ぜひ実践してみてください。
★栄養豊富な部分を取り除き過ぎない
野菜類には、それぞれで栄養豊富な部分があります。調理前の下ごしらえの段階で取り除き過ぎないことが、栄養素の損失を防ぐためのコツにもなります。
たとえばにんじんの場合、栄養豊富なのは皮の部分です。調理前に皮を取り除いてしまうと、その分栄養が失われてしまいます。皮ごと調理するか、もしくはごく薄く剥くようにしてみてください。
ブロッコリーの場合、茎の部分にたくさんの栄養が含まれています。周辺の皮を剥けば食べられますから、そのまま捨てないようにしましょう。薄くスライスして炒め物にしたり、小さなブロック状にカットしてスープの具材にしたりするのがおすすめです。
栄養に関する知識を身に付け効率的な摂取を目指そう
栄養素には、それぞれ異なる性質があります。野菜類に多く含まれるビタミンですが、その中には水や熱に弱いものも。こうした性質を知った上で、できるだけ栄養素を損失しない調理法を実践してみてください。
目には見えない栄養素ですが、私たちの健康を守るために欠かせない存在です。できるだけ効率的に摂取できるよう、普段の食事で心掛けてみてください。